ラグランジアンの一般的な表記に関する論文の紹介その1

作成日:2025年12月11日

本ページは教育・解説目的の二次資料です。必要最小限の範囲で原論文[1]の一部を「引用」として掲載し、 それ以外は筆者による要約・再構成・計算過程の説明です。引用箇所は引用ブロック(灰色枠)で明示します。

原論文の著作権は著者に帰属します。誤りがあれば筆者の責任です。

ラグランジアンの拡張

論文[1]は、力学で使われるラグランジアン$L$を、運動エネルギーを$T$とし、ポテンシャルエネルギーを$U$としたとき、

$$L = T - U$$

という従来の形に縛らず、もっと広く自由な形に一般化できることを示した研究である。

ここでは、原論文[1]で導入される一般化ラグランジアンの形を引用する。

$$L = \dfrac{1}{2}P(x(t),t)\left(\dfrac{dx(t)}{dt}\right)^2 + Q(x(t),t)\left(\dfrac{dx(t)}{dt}\right)+R(x(t),t)$$

これは直感的な拡張だろう。$T$は$m(\frac{dx(t)}{dt})^2/2$などと書かれる。これには、(2)の式の右辺の第1項目が当てはまる。ぱっと見ではわかりづらいので、書き並べてみよう。

$$\dfrac{1}{2}P(x(t),t)\left(\dfrac{dx(t)}{dt}\right)^2 \to \dfrac{1}{2}m\left(\dfrac{dx(t)}{dt}\right)^2$$

対応していることがわかる。

ポテンシャルエネルギー$U$は$mgh$などと書かれる。これには、(2)式の第3項目が当てはまる。こちらも書き並べると

$$R(x(t),t)\to mgh$$

対応していることがわかる。

(2)式は見づらいので、$\dot{x}$を用いた記法にする。ここで、ドットは時間微分を表す。

$$L = \frac{1}{2}P(x(t),t)\dot{x}^2 + Q(x(t),t)\dot{x}+R(x(t),t)$$

この結果は論文[1]で示されている。論文[1]の(2)式に行くためには、やや計算が必要である。ラグランジュの運動方程式

$$\dfrac{d}{dt}\left(\dfrac{\partial L}{\partial \dot{x}}\right) = \dfrac{\partial L}{\partial x}$$

で(5)式を書き下す。(6)式の左辺から行う。ラグランジアンに対して、$\dot{x}$ で偏微分すると

$$\dfrac{\partial L}{\partial \dot{x}} = P(x(t),t)\dot{x} + Q(x(t),t)$$

これを時間微分する。積の微分を使うと、

$$\frac{d}{dt}\left(\frac{\partial L}{\partial \dot{x}}\right) = P_x \dot{x}^2 + P_t \dot{x} + P\ddot{x} + Q_x \dot{x} + Q_t$$

ここで $P_x = \partial P/\partial x$、$P_t = \partial P/\partial t$ などである。(変数を書くのはこのあたりで辞める。)

続いて、(6)式の右辺を計算する。

$$\frac{\partial L}{\partial x} = \frac12 P_x \dot{x}^2 + Q_x \dot{x} + R_x$$

ラグランジュの運動方程式より、(8)式と(9)式の両辺を等しいとして

$$P\ddot{x}+ P_x \dot{x}^2 + P_t \dot{x} + Q_x \dot{x} + Q_t=\frac12 P_x \dot{x}^2 + Q_x \dot{x} + R_x$$

項を整理すると

$$P\ddot{x}+ \frac12 P_x \dot{x}^2 + P_t \dot{x} + Q_t - R_x = 0 $$

$P$ で割ると、最終的に

$$\ddot{x} + \frac{P_x}{2P}\dot{x}^2 + \frac{P_t}{P}\dot{x} + \frac{Q_t - R_x}{P} = 0 $$

(この結果は論文[1]で示されている。)

[1] Cieśliński & Nikiciuk, "A direct approach to the construction of standard and non-standard Lagrangians for dissipative dynamical systems with variable coefficients", arXiv:0912.5296. https://arxiv.org/abs/0912.5296

(本ページでは、設定・主要結果の一部を引用し、その他は筆者が解説として再構成した。)

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