ラグランジアンの一般的な表記に関する論文の紹介その2

作成日:2025年12月12日

本ページは教育・解説目的の二次資料です。必要最小限の範囲で原論文[1]の一部を「引用」として掲載し、 それ以外は筆者による要約・再構成・計算過程の説明です。引用箇所は引用ブロック(灰色枠)で明示します。

原論文の著作権は著者に帰属します。誤りがあれば筆者の責任です。

ラグランジアンの拡張その2

前回の続きである。

言い忘れていたが、この議論は1+1次元(1空間+1時間)でのみになる。今のところ、簡単な議論で済んでいるが、今後は非常に煩雑になることが見込まれるためだ。

簡単な復習をしてから続きの議論に移ろう。初歩的な本に書いてあるラグランジアンの定義は、次のようになっていた。

$$L=T-U$$

ここで、Lがラグランジアン、Tが運動エネルギー、Uがポテンシャルエネルギーである。

この定義を拡張したものが(2)式であり、(2)式を元にラグランジュの運動方程式で書き下したものが(3)式である。(3)式では、$P\neq0$が仮定されている。

$$L(x,\dot{x},t) = \frac{1}{2}P(x,t)\dot{x}^2 + Q(x,t)\dot{x} + R(x,t)$$

$$\ddot{x} + \dfrac{P_x}{2P}\dot{x}^2+\dfrac{P_t}{P}\dot{x}+\dfrac{Q_t - R_x}{P} = 0$$

復習が終わったので、今回の議論に移ろう。

(3)式はやや煩雑である。そこで、($P_x$,$P$,$Q$,$R$が$(x(t),t)$を変数に持つことを思い出して)(3)式の2~4項目の係数をそれぞれ、$a(x(t),t)$,$b(x(t),t)$,$c(x(t),t)$とすると、

$$\ddot{x} + a(x(t),t)\dot{x}^2+b(x(t),t)\dot{x}+c(x(t),t) = 0$$

となる。(この結果は論文[1]で示されている。)

以降は変数は書かないことにする。

aとbの関係性について考えてみよう。(3)式まで戻ると、次の関係式を立てることができる。

$$a = \dfrac{P_{x}}{2P},\;\;b = \dfrac{P_t}{P},\;\;c = \dfrac{Q_t - R_x}{P}$$

(5)式を見ればわかるが、明らかに

$$b_x = 2a_t$$

となる。ただし、ここで偏微分の交換を使った。(この結果は論文[1]で示されている。)

また、(5)式をよく観察すればわかるように、一つ目の式、二つ目の式、三つ目の式でそれぞれ偏微分方程式を解くことができる。

まず、一つ目の$a$に関する式を$P$について解こう。

$$\dfrac{\partial P}{\partial x} = 2aP\Leftrightarrow P = e^{C(t)}e^{2\int^x a(\xi,t)d\xi}$$

ここで、積分定数$e^{C(t)}$の部分をどう処理するかは、(6)式を見ればわかる。bに吸収させればどうやら良さそうである。

そのため、(7)式は$e^{C(t)} = 1$として

$$P = e^{2\int^x a(\xi,t)d\xi}$$

(この結果は論文[1]で示されている。)(5)式の$b$はどのように与えられるのかというと、(この$b$に関する議論は実は意味がない。求めたかった関数$P$は既に$a$のみを用いた形で解けており、満足している。気になる人用に敢えて解くと)(7)式で対数を取れば、

$$\mathrm{ln}P = C(t) + 2\int^x a(\xi,t)d\xi$$

(9)式をtについて微分すれば、(5)式とつながり

$$b = \dfrac{P_t}{P} = \dfrac{dC(t)}{dt} + 2\int^x a_t(\xi,t)d\xi$$

次に(5)式の$c$に関する式を解こう。とはいっても、未知関数が($c$を除けば)2つであることに対し、式が1つなので、$Q(t)$は任意の関数ということにしておこう。そうすれば簡単に解けて

$$R_x = Q_t - cP \Leftrightarrow R = \int^x (Q_t(\xi,t) - c(\xi,t)P(\xi,t))d\xi + C(t)$$

式(11)に関して、$C(t)$があってもラグランジアンには定数項が入るだけであり、作用を考えたときに定数が足されるだけである。したがって物理的に意味がないので、$C(t)$は削除出来て

$$R = \int^x (Q_t(\xi,t) - c(\xi,t)P(\xi,t))d\xi$$

(この結果は論文[1]で示されている。)これまで、$P$,$R$をそれぞれ$a$,$c$を用いた関数の形で解いた。$Q$は任意の関数である。

ハミルトニアンも求めておこう。ハミルトニアンは運動量と一般化速度とラグランジアンより求められ、

$$H = p\dot{x} - L$$

運動量$p$は$\partial L/\partial \dot{x}$で求められることは、解析力学の基本的な本に書いてある。この知識を用いれば

$$p=\dfrac{\partial (\frac{1}{2}P\dot{x}^2 + Q\dot{x} + R)}{\partial \dot{x}} = P\dot{x} + Q$$

(14)式で与えられた式を$\dot{x}$について解けば

$$\dot{x} = \dfrac{p - Q}{P}$$

(この結果は論文[1]で示されている。)よって、ハミルトニアンは(13)式なので、計算すると(2),(13),(14),(15)式より

$$\begin{align*} H &= p\dot{x} - L \\&= (P\dot{x} + Q)\times \dot{x} - (\frac{1}{2}P\dot{x}^2 + Q\dot{x} + R) \\&= P\dot{x}^2 + Q\dot{x} -\frac{1}{2}P\dot{x}^2 - Q\dot{x} - R \\&= \dfrac{1}{2}P\dot{x}^2 - R \\&= \dfrac{1}{2}P\left(\dfrac{p - Q}{P}\right)^2 - R \\H&=\dfrac{(p - Q)^2}{2P} - R\tag{16} \end{align*}$$

$$\begin{align*} H&=\dfrac{(p - Q)^2}{2P} - R\tag{16} \end{align*}$$

(この結果は論文[1]で示されている。)

次は例題を解いていこう。

[1] Cieśliński & Nikiciuk, "A direct approach to the construction of standard and non-standard Lagrangians for dissipative dynamical systems with variable coefficients", arXiv:0912.5296. https://arxiv.org/abs/0912.5296

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